前回はジョギングとランニングについてお話ししましたが、準備運動や運動後の整理体操として動的ストレッチを行うことが望ましいとお伝えしました。ストレッチという言葉を聞かれたことのある方は多いと思いますが、ここではストレッチの意味、効果、行うタイミング、ポイントについて説明していきます。
ストレッチとは
ストレッチという言葉は、英語表記で「stretch」となり「~を引き伸ばす、引っぱる」という意味があります。リハビリテーション分野では運動療法における技術の一つとしてstretching(ストレッチング)という用語を用いますが、ここでは慣用的にストレッチ(stretch)と呼ぶこととします。
ストレッチとは他動的もしくは自動的に筋や関節周囲の組織を伸ばす運動です。ここでは自動運動でのストレッチについて説明しており、自分で行うストレッチによる関節周囲組織の影響についてははっきりしないため省きます。
ストレッチにはいくつか種類がありますが代表的な静的ストレッチと動的ストレッチについて説明します。
- 静的ストレッチとは(スタティックストレッチ)
他動的にゆっくりと筋を最大伸張位まで伸ばした状態で静止させる運動です。最大伸張位まで伸ばすと痛みを生じることがあるため、ここで説明するストレッチでは、筋を最大伸張位の手前(痛みが伴わない)までの範囲までの伸張することとします。
- 動的ストレッチとは(ダイナミックストレッチ)
自分で身体を大きく動かし筋を伸ばしていく運動です。静的ストレッチと比べて最大可動範囲は小さくなります。ラジオ体操が動的ストレッチに分類されます。
効果
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
- 身体の柔軟性の維持、改善
一般的には筋線維が硬くなっていたり(硬結)、筋が短縮している部分が伸張されることによって柔軟性が改善されると考えられています。個人的には、静的ストレッチが硬結部位や短縮部位を伸張する効果について不明ですが、柔軟性の保たれている部位を伸ばす効果はあるのではないかと考えます。
- リラクセーション効果
静的ストレッチは身体のみでなく精神面への影響もあります。健常成人男性10名を対象に、下腿三頭筋のストレッチによる心拍数や呼吸の変動から交感神経活動や副交感神経活動の変化を観察した先行研究ではストレッチ後のリラクセーション効果が示唆されました(1。
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
- 怪我の予防
筋が収縮することによって血流が促進され代謝が高まります。これにより体温や筋の温度が上昇し、筋もより収縮・弛緩しやすくなり、運動や活動をした際の筋損傷を防ぐ効果が高くなると考えられます。
また、代謝向上による肺への酸素の取り込みも改善し運動パフォーマンスを高めること、心臓への負担を減らすことにもつながります。
- 低血圧症状やめまい、不整脈出現を予防
負荷の高い運動を急に終えると自律神経が乱れることでこれらの症状が生じることがあります。運動後に軽い運動(動的ストレッチ)を行うことで、交感神経系の活動が優位な状態から徐々に副交感神経系とのバランスが調整され、運動直後に起こる低血圧症状やめまい、不整脈出現を予防する効果があるとされています。
行うタイミング
ストレッチの効果を最大限に発揮させるために行うタイミングについて説明します。
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
筋温が高まった運動後や入浴後に行うのが良いと考えられます。筋の周りには筋膜で覆われています。ソーセージの皮のようなものだと思ってください。筋膜にはコラーゲンが豊富に含まれており、筋膜は温度が高くなると柔らかくなります。筋膜が柔らかくなると筋の柔軟性も高くなるということになります。
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
運動前にウォーミングアップとして行うことで怪我の予防となります。また運動後に整理運動として行うことで身体の状態を運動前の状態に戻すことに用いられます。
ストレッチを行う上でのポイント
静的ストレッチ、動的ストレッチともに伸びている部分を意識して行うことが重要です。以下にそれぞれのストレッチのポイントについて説明します。
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
- ストレッチの程度
痛みが生じない程度で行うようにしてください。痛みが生じたほうがストレッチを行ったという実感が高い方もいらっしゃると思いますが、痛みにより生じる防御性収縮(筋を収縮することで身体を痛みから守る反応)により期待した効果を得られない可能性があります。ただし全く伸びた感じがしない場合でも効果が薄れてしまうのでその程度は自分で調整してみてください。
- 実施時間
ストレッチを行う時間ですが短すぎても効果が低いと考えられます。諸説ありますが、私はストレッチを行う部位一カ所に対して90~120秒は必要であり、3~5分で効果が最大と言われています。これはSpring and Dashpot Modelの概念によりコラーゲン線維の性質が変わることをもとに考えられているようです。
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
- 実施時間
ウォーミングアップでは一般的には20分程度で行うことが多いです。身体を温めることが目的であるため気温が高い日では20分より短くなり、気温が低ければ20分以上要することもあると思います。
整理運動では5~15分程度行うことが多いです。運動終了後の2分間の心拍数低下をできるだけ緩やかにすることが重要ですので時間にゆとりをもって上記の時間としています。
終わりに
静的ストレッチ、動的ストレッチについて説明しました。先行研究では、心臓病患者に対して運動療法を行った際、2/3以上の人がウォーミングアップとクールダウン中になんらかの症状が発生したとされており、大きな事故を防ぐことができたという報告があります。このことからウォーミングアップとクールダウンの重要性が分かります。みなさまも安全に運動を行うようにしてください。
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参考文献)
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