私が関わる患者さんの多くが貧血です。また、患者さん以外にも私の周りで貧血で悩んでいる方が意外と多いです。今回は貧血について調べてみました。
貧血とは
血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少した状態を言います。ヘモグロビンは、鉄(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結合したものです。ヘモグロビンの役割は肺で酸素と結びつき、身体全体の筋肉(骨格筋)や細胞に酸素を運び、そこで生み出された二酸化炭素を受け取って肺に戻す役割があります。
貧血の症状
貧血になると上述しましたように酸素が身体全体へ運びにくくなるため以下のような症状が出現します。
【軽い貧血】
・倦怠感(だるさ)、易疲労性(疲れやすさ)
・顔色が青白くなる
・めまい
・発汗、頻脈、呼吸が速くなる
【重度の貧血(心臓や肺の病気がある場合)】
・息切れ(呼吸困難)
・動悸
貧血の原因
【赤血球の数の減少】
・失血:交通事故、手術、外傷(怪我)などの急性出血で生じます。
・溶血性貧血:溶血とは赤血球が破壊されることを言います。溶血が進み貧血となります。①赤血球の形や膜の異常、②ヘモグロビンの異常、③赤血球に対して自己抗体がつくられること(自身の赤血球を排除する分子がつくられる)が原因となります。①、②は先天性(遺伝的)で、③は後天性です。後天性である自己抗体ができる原因は、薬剤、マイコプラズマなどのウイルス感染、悪性腫瘍、全身性エリテマトーデス・リウマチ性関節炎(関節リウマチ)などの自己免疫疾患があります。
・亜鉛欠乏性貧血:亜鉛が欠乏することによって、骨髄における血液細胞の分化や増殖が障害されます。スポーツ競技者や透析患者に多いとされています(1。
・腎性貧血:腎臓から赤血球の産生を促進させる「エリスロポエチン」というホルモンが分泌されています。腎臓が障害されたり、その機能が低下するとエリスロポエチンの産生が低下し、骨髄での造血機能が低下して生じます(2。
【赤血球の形成不全】
・鉄欠乏性貧血:ヘモグロビンの構成成分である鉄の不足で生じ、貧血の中では最も頻度が多いです。原因として食物中における鉄の栄養不良、消化管における鉄の吸収障害(手術後など)、鉄の必要量の増加(妊娠中など)、また慢性的な失血(慢性疾患、悪性腫瘍)などが挙げられます。
・悪性貧血:ビタミンB12や葉酸の欠乏により生じます。これらを投与すると治療できるので“悪性”という表現は正しくありませんが慣用的に用いられています。
・再生不良性貧血:骨髄は血液を造りますが、その機能が低下もしくは消失した状態です。原因は加齢のほか抗癌剤、ベンゼン、無機ヒ素剤、抗てんかん薬、抗甲状腺薬、クロルプロマジン、有機ヒ素剤、殺虫剤などの化学物質、放射線、さらにウイルス性肝炎、伝染性単核球症、栗粒結核などの感染症が挙げられます。
参考文献)
岩田 隆子,恒吉 正澄,宮原 晋一:わかりやすい病理学,改訂第4版,南江堂,2005,P.237-239
治療
・失血:輸液、輸血。
・溶血性貧血:自己免疫性の場合は副腎皮質ホルモン療法が主です。脾摘(手術)やリツキシマブ(免疫抑制療法)による治療が行われることもあります(3。
・亜鉛欠乏性貧血:亜鉛の補充。
・腎性貧血:赤血球造血刺激因子製剤(ESA:erythropoiesis stimulating agent)の投与(2。
・鉄欠乏性貧血:鉄分の補充。
・悪性貧血:ビタミンB12、葉酸の補充。
・再生不良性貧血:上述した原因の除去。最近では免疫抑制療法や骨髄移植も行われています。
参考文献)
岩田 隆子,恒吉 正澄,宮原 晋一:わかりやすい病理学,改訂第4版,南江堂,2005,P.237-239
各ミネラル、ビタミンの摂取基準
上記した亜鉛、鉄、ビタミンB12、葉酸の摂取基準は以下のようになるので参考にしてみて下さい。
参考文献)
吉田 企世子,松田 早苗:正しい知識で健康をつくる あたらしい栄養学.高橋書店
各ミネラル、ビタミンが多く含まれている食品
亜鉛、鉄、ビタミンB12、葉酸が多く含まれている食品は以下のようになるので貧血傾向の方は料理の参考にしてみて下さい。
【亜鉛を多く含む食品(100g当たり)】
カキ(魚介類):14.0㎎、ゆでタラバガニ:4.2㎎、アサリの水煮缶:3.4㎎
豚レバー:6.9㎎、牛肩ロースの赤身:5.7㎎、牛もも赤身:5.1㎎
油揚げ:2.5㎎、納豆:1.9㎎
【鉄を多く含む食品(100g当たり、※は10g当たり)】
豚レバー:13.0㎎、鶏レバー:9.0㎎、牛もも赤身:2.7㎎
シジミ:8.3㎎、赤貝:5.0㎎、アサリ:3.8㎎
大根の葉:3.1㎎、菜の花:2.9㎎、小松菜:2.8㎎、枝豆:2.7㎎
青のり※:7.7㎎、生湯葉:3.6㎎、納豆:3.3㎎、生揚げ:2.6㎎
【ビタミンB12を多く含む食品(100g当たり、※は10g当たり)】
シジミ:68.0㎍、アサリの水煮缶詰め:64.0㎍、アサリ:52.0㎍、マイワシ丸干し:29.0㎍
カキ(魚介類):23.0㎍、ニシン:17.0㎍、サンマ:16.0㎍
牛レバー:53.0㎍、鶏レバー:44.0㎍、豚レバー:25.0㎍
プロセスチーズ:3.2㎍、パルメザンチーズ:2.5㎍
焼きのり※:5.8㎍、青のり※:3.2㎍
【葉酸を多く含む食品(100g当たり、※は10g当たり)】
菜の花:340㎍、枝豆:320㎍、モロヘイヤ:250㎍、ブロッコリー:220㎍、ほうれん草:210㎍
アスパラガス:190㎍、春菊:190㎍
イチゴ:90㎍、マンゴー:84㎍
納豆:120㎍、ゆでひよこ豆:110㎍
焼きのり※:190㎍、板わかめ※:51㎍
鶏レバー:1300㎍、牛レバー:1000㎍
参考文献)
吉田 企世子,松田 早苗:正しい知識で健康をつくる あたらしい栄養学.高橋書店
注意点
貧血には原因がたくさんあります。貧血かもしれないと思っても自分では何が原因で起こっているかを判断することは難しいことがあります。症状がみられたら病院を受診しきちんと検査し原因を調べてもらうことが大切だと思います。
終わりに
今回は貧血についてお話しをしました。貧血といってもたくさんの種類がありますよね。食事で貧血を予防できることもありますので該当するかもと思われた方は参考にしてみて下さい。
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参考文献)
1)亜鉛欠乏症の診療指針 2018.一般社団法人 日本臨床栄養学
2)上月 正博:腎臓リハビリテーション,医歯薬出版株式会社,2015,P.50・284・390
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