有酸素運動の効果

フレイル・心臓病

ここでは有酸素運動の効果について説明していきます。その前にATP(アデノ三リン酸)という物質と筋肉の関係について理解していただく必要があるので簡単に説明します。

有酸素運動とは

【ATPと筋肉の収縮の関係について】

ATPとはAdenosine Tri-Phosphateの略でアデノシン三リン酸です。このATPが分解されることによって発生するエネルギーによって筋肉が収縮します(下図)。

ATPは筋肉のなかにわずかしかないのですぐに消費されてしまいます。無酸素的な運動のように高負荷の運動ではクレアチンリン酸(PCr)という物質が分解されることやグルコースやグリコーゲンの分解でATPが産生されます。

【有酸素運動とは】

徐々に運動時間が長くなると筋肉のなかのミトコンドリアの働きが活発になり酸素を利用してATPがより多く生み出されます。瞬発的な運動では主に糖をエネルギー源としていましたが低負荷で長時間の運動になると糖から脂質が主なエネルギー源にかわっていきます。このように有酸素運動とは比較的強度が低く、長時間継続可能な運動のことをいいます。また脂肪に加え酸素を利用することでエネルギーが生み出される運動のことです。

有酸素運動の効果

【ダイエット効果】

運動時間が長ければ長くなるほど脂質の利用効率が上がっていきます。そのため体脂肪が燃焼されダイエット効果が期待されます。

【血圧を下げる効果】

有酸素運動を行うと一酸化窒素という物質が分泌されます。一酸化窒素の働きは血管を拡げたり血管を柔らかくする作用があります。これにより心臓の血管や手足の血液が流れやすくなり、酸素を運びやすくします。また血液を固める血小板が集まることを抑えてくれるので血液をサラサラにしてくれます。これらの作用によって血圧を下げる効果があります。

【体力を向上させ疲労しにくい身体をつくる】

有酸素運動を行うと筋線維にあるミトコンドリアの含有量が増加します。また全身運動により毛細血管が発達(密度増加)し、筋線維内に流れ込む血液量が増えます。その結果、心拍数が改善します。 血液量が増加すると運ばれる酸素も多くなるため、運動に必要な酸素を長い時間供給することができます。さらに筋肉の種類も変換されます。筋肉には実はたくさんの種類があると言われています。高いエネルギーを出し、瞬発的に働く筋肉(例えば短距離走、重いものを持ち上げるなど)であったり、低いエネルギー出力ですが疲労しにくく長時間にわたって働くことのできる筋肉(例えば長距離走)であったり、もしくはそれらの中間に位置付けられるような筋肉などがあります。これらの種類のなかで有酸素運動を行うと、低いエネルギー出力ですが長時間にわたり疲労することなく働くことのできる筋線維の種類が増えたり、変換されます。よって疲れにくい身体を作ることができます。

【交感神経の働き、不整脈の発生を抑える】

自律神経は交感神経と副交感神経のバランスで調整されています。活動すると交感神経が有意になります。私たちでも交感神経が働きすぎて身体に不調をきたすことが多いですよね。例えば心臓では不整脈を引き起こすことがあります。心臓は司令塔(洞結節)があってそこが引き金になって規則正しく働きます。しかし、交感神経が有意になると洞結節以外のところが勝手に働きだします。そうすると心拍数が上がり、血圧が下がります。血圧が下がることによって意識がもうろうとしたり、心臓のポンプがうまく働かず心不全という病気を引き起こしてしまう危険性が高くなります。有酸素運動を継続することによって交感神経の働きを適度に抑え、これらの症状を改善されることが期待されます。

おわりに

ここでは有酸素運動の効果について説明しました。健康的な身体をつくるためにも有酸素運動をはじめてみてはいかがでしょうか?

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