概念
『衰弱』、『老衰』という意味のfrailtyという言葉から由来しています。加齢に伴って、体の予備力が低下し、身体の障害に陥りやすい状態です。身体的問題のみならず、記憶の衰えやうつなどの精神的な側面も抱えているほか、独居や他者との交流がない状況も含む包含した概念です。
参考文献)
日本サルコペニア・フレイル学会:日本サルコペニア・フレイル学会認定サルコペニア・フレイル指導士テキスト,振興医学出版社,39,2020.
病気との違い
疾病(病気)モデルでは疾病により日常生活機能の障害が生じます。これにより要介護状態に陥る可能性があります。一方、フレイルモデルでは日常生活機能の障害が生じる前段階としてとらえることができるとされています。このモデルで重要なのはフレイルは可逆的であり自立に戻る可能性があるということです。
参考文献はこちら→https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/3/106_557/_pdf/-char/ja
頻度
日本人の複数の研究を合わせた平均年齢75.1歳、16,251名の地域在住高齢者の解析では日本版CHS基準によるフレイル高齢者の割合は11.2%とされています。
年代別にみると
65-74歳 4.0%、
75-84歳 16.2%
85歳 34.0%
とのことです。
参考文献)
Satake S,Shimada H,Yamada M,et al.:Prevalence of frailty among community-dwellers and outpatients in Japan as defined by the Japanese version of the Cardiovascular Health Study criteria.Geriatr Gerontol Int 17(12):2629-2634,2017
評価方法
フレイルの主な評価法を以下に示します。
【改訂日本版CHS基準】
元々は表現型モデル(Phenotype model)と呼ばれており、加齢に伴って現れる身体機能の衰えが一定以上蓄積した状態をフレイルと捉える方法です。Friedという方がこのモデルに基づいて考案されました。
【基本チェックリスト】
厚生労働省が作成したものでもともとは国が介護予防事業として、要介護状態ではない高齢者のなかで、要介護状態になる危険性のある高齢者をピックアップするために使用したツールです。
閲覧したい方はこちら→厚生労働省 基本チェックリスト
上記以外にも複数のフレイル評価が報告されているようです。
対応方法
主に食事、運動と活動、社会参加が重要です。
【食事】
タンパク質摂取・・・1.0~1.2g/kg/day以上、ビタミンD
【運動】
筋力トレーニング(2-3回/週、3セット):マシン、自重負荷、ゴムチューブなど
【社会参加】
多くの仲間と健康づくりを楽しみながら継続できることの重要性が示唆されています。
フレイル予防のための運動
運動のポイント:
①強化したい筋肉を意識して運動する
②息は止めない
ここからは実際にいくつか挙げます。
【ヒップアップ】
方法:仰向けで寝て、両膝を立てます。手は横に置いてください。 そのままお尻を持ち上げいったん止めて、ゆっくり下ろします。
強化される筋:大殿筋
効果:①椅子からの立ち上がりがしやすくなる ②歩行時の推進力が得られる ③姿勢が良くなる
【スクワット】
方法:立位で足を肩幅にひろげます。次に股関節(脚の付け根)を意識しながらお尻を椅子にのせるイメージで行いましょう。このとき背中を丸めないように注意してください。また膝がつま先の前に来ると効果が薄れるので注意してください。しゃがむ深さは太ももと床が平行になるくらいが一般的な角度ですが難しければ無理のない角度からはじめてください。
強化される筋:大腿四頭筋、大殿筋
効果:大腿四頭筋;①歩行時の膝折れ防止
大殿筋;①椅子から立ち上がりやすくなる、②歩行時の推進力が得られる、③姿勢が良くなる
【カーフレイズ】
方法:立位で足を肩幅にひろげます。ゆっくりかかとを挙げて止め、ゆっくり下ろします。
強化される筋:下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)
効果:①歩行時の推進力が得られる、②つま先が地面や段差に引っ掛からないようになる
【トゥレイズ】
方法:椅子に腰かけます。膝を90°曲げて足の裏を床につけます。つま先をゆっくり持ち上げる。このときつま先が膝にくっつくように意識しながら行ってください。持ち上がる範囲まで挙げたら止めて、ゆっくり下ろします。
強化される筋:前脛骨筋
効果:①歩行時につま先を上に持ち上げることで引っ掛かりにくくなる
②後ろにバランスを崩しそうになったときに身体をまっすぐに戻し姿勢を保つ
【タオルギャザー】
方法:椅子に座り、膝を90°曲げてください。足の下にタオルを敷き、足の裏を地面にしっかりつけます。足の指をグーパーしながらタオルを自分の方に手繰り寄せます。このとき、つま先を浮かせながらするとより効果的です。
※タオルがなくても可能ですがタオルがあった方が動きのイメージがつかみやすいですよ。
強化される筋:足趾屈筋群
効果:①歩行時の前後方向の安定性を高める、②足のアーチ保持(偏平足予防)に役立つ
最後に
フレイルは病気の一歩手前で予防できる状態だと考えられます。健康な状態を少しでも保ち、好きなことを続けるために、運動や食事、仲間と一緒に過ごす時間を保ちながらフレイル予防をおこなっていきませんか☆
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