腰痛について

症状別

仕事や日常生活をおくる中で腰痛になり困ったことはありませんか。今回は腰痛について予防方法や解決策について説明します。

腰痛とは

腰に痛みや張り、違和感を感じるものを総称して呼ばれる症状です。病名ではないため腰になんらかの障害や病変が生じることで腰痛になることがあります。腰痛によって運動機能や日常生活、業務に支障をきたすだけでなく、気分が落ち込むなど心理面にも影響を及ぼしてしまいます。

解剖

脊椎は頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙骨1個、尾骨1個の計26個になります。これらは靭帯や椎間板で互いを安定させており、その周りは筋肉で覆われています。椎間板にはクッション作用もあります。また脊椎の上下は互いに関節でつながっており、これにより脊椎は前後や左右、回転する方向に動くことができます。この脊椎の動きで腕を伸ばしたり、手の細かな運動も可能にしてくれます。そのほか、脊椎は側面からみるとS字カーブ(生理的弯曲)を描いていますがこれにより、頭や体幹の重力を分散し、身体の一カ所に負担がかからないようにしています。

腰痛が生じやすい業務

職業病としても多い腰痛ですが、最も腰痛が生じやすい業務としては中腰姿勢での作業です。あとは長時間座ると腰痛を生じることが分かっています。また仙骨座りといって骨盤を後ろに倒した状態になると腰痛が生じやすいです。脚を組むという動作も仙骨座りになります。

中腰姿勢や座業で腰痛を生じやすいことを先行研究から説明します。

下の図は体重70kgの人の種々な姿勢における第3腰椎椎間板への荷重量を測定したものです(1。立位で第3腰椎椎間板にかかる荷重を100%とした場合、立位で前かがみになると負荷が増えているのがわかります。さらに物を持った状態では当然増えます。また座った状態でも立位以上の負荷がかかっていることがわかります。

下の図は、立位でしゃがみ20kgの物を持ち上げ始め、さらに下ろした状態までの腰椎へのせん断力を表したグラフになります(2。せん断力とは物を横方向へずらすような内部に生じる力のことです。

荷重が増えることと、このせん断力が加わることで組織が損傷しやすいとされています。青色の線は分節をもつ腰部モデルとありますが人間の腰椎は5個あります。正常であれば腰椎1つ1つがスムーズに動きますので正常であれば青色の線のような力になります。赤色の線のように分節をもたないというのは5個の腰椎を全て固定しているモデルです。米国労働安全衛生研究所の報告では,持ち上げ動作において腰部の障害リスクがあがる椎間板の許容限界値として、せん断力を 1000N としています。

このように20kgの重りをもつ動作では健常な腰の人のせん断力に関して、限界値を超えていないようです。しかし腰への負担が長年に蓄積されることで腰椎の動きが悪くなったり、腰の周りの筋肉が硬くなって腰が動きずらくなることが予想されます。腰椎が動きずらくなると一体化して分節を持たないモデル(赤色の線)のような構造になると考えられます。このようになるとせん断力では限界値を高く超えるため損傷のリスクが高まります。したがって業務や日常生活で対策を行い腰への負担を減らすことや、自主的な運動を行い腰の柔軟性を確保しておくことが重要であると考えられます。

腰痛予防の対策

  • 中腰姿勢で物をもつとき
  • 座業を行うとき

身体をまっすぐにして座り良姿勢をとってください。良姿勢とは両足の幅を坐骨結節と同じ程度の幅に拡げて床につけた状態のことです。膝の角度は直角にし、背もたれにもたれないようにします。上半身を起こし耳垂(耳たぶ)、肩、坐骨結節が真っ直ぐになるようにして座ります。

※坐骨結節の位置:座った状態でお尻の下に手を当ててください。手に骨の突出が確認できると思います。それが坐骨結節です。

椅子に座る時間ですが連続10分を超えると腰痛リスクが高まるという報告がありました(3。従って10分を目安にこまめな軽い運動を行うことが腰痛予防に重要であることが考えられます。

腰痛予防の運動

腰痛予防のために筋肉の硬さを緩めたり、関節の動きをスムーズにする運動を紹介します。呼吸に意識を向けることで心身の緊張を緩める効果も期待できます。

  • 背筋の筋や筋膜を伸ばす運動①
  • 背筋の筋や筋膜を伸ばす運動②
  • 背筋の筋や筋膜を伸ばす運動③

これらの運動は最低30秒ゆっくりと筋肉が延びていくように行います。

  • 腰や骨盤の関節をスムーズに動かす運動

この運動は腰の動きや身体全体の動きが軽くなった、動きやすくなったところで終了します。

終わりに

これらの運動は特殊な機器や場所を選ばないため実施しやすいのではないでしょうか。私は腰痛にならないように仕事の合間や休日にこれらの運動を行っています。無理のない時間で少ない種目からでよいのでぜひ行ってみて下さい! 腰痛予防を応援しています!(^^)!

参考文献)

1)西條 富美代:姿勢と動作ー作業姿勢と負担ー.理学療法学.10(3):127-134,1995.

2)牧野内 裕:分節を持つ腰部モデルを用いた 持ち上げ動作における腰部負荷解析.38,2022.

3)増田 一太:体育座りと椅座位の腰痛リスク 脊椎アライメントのバイオメカニクス的検討.第50回日本理学療法学術大会 抄録集.

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