有酸素運動とは
心臓病予防のためには運動が勧められていますが運動の種類として主に有酸素運動が用いられています。筋力を強くする筋力増強運動に関しては注意点を守れば効果があるようです。ここでは有酸素運動についてお伝えします。有酸素運動とは酸素と共に主に脂肪をエネルギーとして使用して筋肉が収縮する運動のことです。有酸素運動は運動の強度が低く長時間行えるため、脂肪燃焼に優れており運動時間が長くなればなるほどにその効率が高くなりますのでダイエット効果にも期待できます。そんな健康に良さそうな有酸素運動ですが、理学療法士など運動に関する医療の専門職は有酸素運動を患者さんに提供する際に、以下の6つの原則に従って処方しています。Frequency(頻度)、Intensity(強度)、Time(時間)、Type(種類)、Volume(運動量)、Progression/Revision(漸増/改訂)の6つでそれぞれの頭文字をとって、FITT-VPと呼ばれています(1。ちなみに作業療法士である私も心臓病の患者さんに関わる際にはFITT-VPを参考にしています。
有酸素運動の説明については別記事にも記載しています→有酸素運動の効果
FITT-VPについて
【頻度(Frequency)】
歩行~早歩き(4km/h未満~6.4km/h程度)であれば5回/週以上、ジョギングであれば3回/週以上とされています。これらのことから可能であればほぼ毎日行うのが良さそうです。
【強度(Intensity)】
病院に心臓病で受診されている方であればCPXという自転車のようなものに乗って、個人に応じた運動の強度を処方されます(全ての病院にCPXが設置されているわけではありませんが…)。経験されたことがない方でしたら「心拍数予備能」から運動の強度を決めます。
心拍数予備能=(208-0.7×年齢-安静時の心拍数)×0.6+安静時の心拍数
その他、主観的に感じる強さが「楽」~「ややつらい」程度の強度が妥当ということも分かっています。先行研究では主観的強度と装置などを用いた客観的強度を比較したときに高い相関関係があるようです(2。
これらのように運動強度は心拍数予備能の心拍数(≒脈拍数)や主観的強度に達する程度のレベルで運動を行うことが推奨されています。
【時間(Time)】
準備運動と運動後の整理体操を入れて30~60分/日を目標にすることが推奨されています。これは20分程度の有酸素運動によって脂肪が燃焼し始めるためです。高血圧や脂質異常、高血糖により動脈硬化を促進し心臓病を発症させてしまう可能性がありますので、脂肪を体内に沈着させないようにすることが大切です。心臓病を防ぐためにも20分以上の有酸素運動が良いのですが、運動に慣れていない方がいきなり20分続けて行うのは危険ですので10分未満の軽めの運動から始めるのが良いとされています。
【種類(Type)】
種類はウォーキング、ジョギング、サイクリング、水中ウォーキングなどが推奨されています。これらは自分で運動強度を調整でき時間も調整できます。心臓病を誘発する要因として精神的ストレスも含まれています。これらの運動種目は競技性がなく自分のペースでできることも良いと考えられます。また、心臓病予防のためには運動は継続する必要があります。ウォーキングやジョギングなどは器具を必要としないため気軽に始められるので継続性が得られやすいように思われます。高齢者では膝の悪い方もおられると思いますので、膝の負担軽減のためにサイクリングや水中ウォーキングがおすすめです。
【運動量(Volume)】
上記の運動の頻度、強度、時間の積です。一日のスケジュールが埋まっておりまとまった時間を確保できないことや、疲労の影響で続けて運動できない場合などで20分間の運動を行えない場合には、10分の運動を2回行うなどで1日の合計として運動時間を確保できたら良いと思います。
【漸増/改訂(Progression/Revision)】
さあ運動をするぞっ!と思っても元々運動習慣がない方もいると思います。また家の中でもほとんど動かず寝て過ごしている方や他の病気を患っている方などに、突然20分の運動は身体への負担が大きかったり、強い意志を持って取り組み続けることは難しいのではないのでしょうか。そのような場合は10分未満の運動から始め、例えば1週間続けたり、しんどくない場合には次の週は5分長く運動するなど少しずつ目標時間に近づけていくことが大切です。また、その日の体調の変化もあると思いますので運動時間を長くしたり運動強度を増やすだけではなく、ときには減らすなど今行っているメニューを見直すことも長期間運動を継続していくためには必要です。
おわりに
運動の専門家は一般的には上記の原則に則って運動の処方を考えています。病気を持たれている方や怪我をされている方には適応にならないことがありますのでかかりつけの医師に相談してみてください。
こんなに偉そうなことばっかり言っていますが、私自身は普段運動習慣があまりありません。通勤の往復と職場内での移動でどうにか運動量を確保できたらと思っているのですが…まずはどの程度歩いているのか歩数計や万歩計を持参することからはじめたいと思います。
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参考文献)
1)日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版)
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