はじめに
近年健康増進に寄与しているといわれている発酵食品。発酵食品は古くからあると言われています。諸説ありますが、最も古いものは約6000年前に中央アジアの乾燥した草原で牛乳から偶然にできあがったものがヨーグルトとして推測されているようです(1。今では多くの発酵食品があり、日常的に摂取しています。今回は発酵食品について代表的な食品や身体への期待される効果、及び摂取に関する注意点について説明していきます。
発酵食品とは
発酵とはWikipediaでは「有機栄養素の嫌気的(酸素を介さないこと)な分解を通じてアデノシン三リン酸(ATP)を生成する主要な手段である。」とされています。簡単に言うと「微生物によって、食べ物の中の栄養素が増えたり、よりおいしくなるというように人間にとって好ましい変化」です。発酵食品とは「カビ、酵母や細菌などの微生物の作用を利用して製造される食品」(1です。
発酵食品の原料は穀類や魚介類など栄養に富んでいるものが多いですが、発酵によって原料に含まれる大きな分子が分解することで、舌の味センサーを刺激し強いうま味を感じることができるとされています(2。栄養価に関しては例えば乳たんぱく質からできるペプチドは血圧を整える働きがあったり、でんぷんからできるオリゴ糖は腸内環境を整える働きが期待できるとされています(2。
以下に代表的な発酵食品について、効果や注意点を紹介します。
代表的な発酵食品と期待される効果
発酵食品は善玉菌を増殖し、悪玉菌の増殖を抑制する働きによる整腸作用があることや免疫細胞を活性化させる働きによって免疫力を高めることはよく言われていることだと思います。また整腸作用により腸の働きも活性化され代謝も向上することにより脂質も蓄積されにくくなりダイエット効果が期待できると考えられます。
さらに、そのほか期待される効果について先行研究をもとにまとめました。
- ヨーグルト
これらは牛乳に乳酸菌を加えて発酵させたものです。
効果として整腸作用、感染防御作用、抗アレルギー作用、中性脂肪低減効果、血糖値の上昇抑制作用、毛細血管の血流を促進することで筋肉疲労回復や持久力低下の抑制させる効果が期待されます(3。
200種類以上あるといわれる乳酸菌はそれぞれ効果も異なってきますので、摂取する乳酸菌の効果を確認して下さい(効果は商品パッケージに記載されていることが多いと思います)。
- 納豆
大豆に納豆菌を加えて発酵させたものです。
その他の効果として骨粗鬆症による骨折リスクの低減効果が示唆されています。先行研究では閉経後の女性に対して行った研究ですが、納豆を1週間に7パック以上摂取した女性は骨密度が高く、骨折リスクが低かったそうです(4。
美肌効果を示唆する研究もあります。先行研究では、肌の潤いやすべすべ感など肌に関する自覚症状の改善、肌の角層水分量の増加や皮膚の弾力性が増加した結果が認められたようです(5。
その他、大豆製品の摂取量における病気の死亡リスクに関する研究では、発酵大豆製品を摂取した群では男女ともに総死亡リスクが低かったこと、心血管疾患の死亡リスクが低かったことが示されました(6。
- 味噌
大豆や米、麦等の穀類を蒸煮させ、これに麹菌と塩を混ぜ発酵、熟成させたものです。
味噌に含まれる塩分から血圧を高めると危惧されていますが、先行研究では夜間における降圧効果が認められた報告があります(7。
美肌効果も期待されました。培養ヒト表皮角化細胞を用いた研究では、米糠エキスによりこれらの細胞発現と活性化の増加が認められたそうです(8。これは肌の保湿に重要とされています。
- 発酵漬物
漬物には発酵する「発酵漬物」と、発酵しない「無発酵漬物」に分類されます。発酵漬物の仕組みとして、まず野菜に塩、醤油、米酢、みりん、ぬか、麹、味噌、酒粕などを加えて漬け床に漬け込みます。すると野菜から出た水分中に乳酸菌が育成されます。このように漬物が発酵されますが、この過程から発酵漬物はこれまでに紹介した発酵食品の効果が期待できると思われます。
しかし漬物の効果はこれだけでは終わりません。発酵の過程でできる乳酸菌からGABA(γ-アミノ酪酸)が生成されることがわかりました。GABAの効果として、効能がまとめられた研究論文によりますと精神安定作用、血圧降下作用、成長ホルモンの分泌促進作用、中性脂肪低減作用、記憶学習促進作用、体重軽減作用が挙げられています(9。
- 食酢
アルコールと酢酸菌で発酵させた発酵食品です。
酢はダイエット効果としてもよく取り上げられており、内臓脂肪の蓄積を抑えることで肥満軽減につながることはご存じのことと思います。先行研究でもメタボリックシンドロームの予防に役立つ可能性があることが示唆されました(10。その他、食酢の複数の効果についてまとめられた論文によりますと、高めの血圧の低下、血糖値上昇抑制、骨粗しょう症予防、疲労回復、免疫力向上、便秘解消作用があるようです(11。
- 醤油
醤油の作り方はいくつの方法がありますが、最も多いのは大豆や小麦に麹や乳酸菌、酵母に塩を混ぜて発酵・熟成させたものです。
醤油の作用がまとめられた論文によりますと、胃液分泌促進による消化を良くする働き、醤油成分には発がん抑制効果が示唆されたことが挙げられています(12。
摂取に関する注意点、摂取する目安と工夫
発酵食品は摂取しすぎると腸の活動が活発になりすぎるためガス(おなら)がでたり、腹痛や下痢を招く危険性がありますので注意して下さい。
また塩分濃度の高いものも多いため高血圧や心血管疾患のリスクが高くなるほか、脂質や糖質を多く含むものもあるため肥満や糖尿病のリスクが高くなる恐れがあると考えられます。
ここでは健常者に対して各食品における注意点、摂取量の目安と工夫について記載します。
- ヨーグルト
日本食品標準成分表2015年版(七訂)によると、全脂無糖ヨーグルトには脂質の一つである飽和脂肪酸が多く含まれています。飽和脂肪酸は2型糖尿病や、LDL-Cの上昇が示されておりこれは脂質異常症や動脈硬化の原因となります。これらが心配な方は低脂肪や無脂肪ヨーグルトがおススメです。
また加糖ヨーグルトを摂取されている方は糖質も多いため、善玉菌が豊富なオリゴ糖をかけてみてはいかがでしょうか。オリゴ糖に関しては別記事「オリゴ糖で腸活しましょう!」も参考にしてみて下さい。
乳糖不耐症の方はお腹がゆるくなりやすいです。アジア人は乳糖(ラクトース)の分解酵素であるラクターゼの割合が少ないので日本人も当てはまりやすいと考えられます。牛乳に比べると乳糖は少ないのですが心当たりのある方は摂取量を減らす工夫が必要と思われます。一日に摂取する量は商品に記載されていることもあるのでその量を基準にして様子をみながら調整してみてはいかがでしょうか。
- 納豆
納豆には大豆イソフラボンが豊富に含まれています。適量であれば骨粗しょう症予防や更年期障害の症状軽減が期待されます。食品安全委員会のホームページ(閲覧日:2025年3月13日)によりますと「大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値70~75mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算値)」としています。これは「平成14年国民栄養調査から試算した大豆イソフラボンの摂取量が64〜76mg/日であり、これによる健康被害の報告がなかったこと」、また「イタリアの研究において閉経後女性を対象に大豆イソフラボン錠剤を150mg/日、5年間、摂取し続けた試験において、子宮内膜増殖症の発症が摂取群で有意に高かったこと」を踏まえ上記の値を設けているようです。納豆は商品によっても内容量は異なりますが約40gです。食品安全委員会のホームページ(閲覧日:2025年3月13日)によりますと納豆100gに対して大豆イソフラボンの含有量は平均73.5gですので、納豆1パック当たりの大豆イソフラボン含有量は平均29.4gです。
納豆には痛風の原因となるプリン体が含まれます。先行研究では納豆1パック(40g)を1週間に5日以上摂取してもプリン体における人体への影響は少ないと考えられています。ただこの研究では納豆を2パック以上摂取する者はいなかったため2パック以上摂取した場合の人体への影響は不明です(13。
以上のことから、納豆を一日に摂取する量は1パックが安全ではないかと考えられます。
ただし、血液をサラサラにするような薬(ワーファリンなど)を服用されている方は納豆を摂取することは控えてください。納豆にはビタミンKが豊富に含まれており、これによりワーファリンの抗凝固作用(血液をサラサラにする作用)が弱まってしまうためです。
- 味噌
味噌には塩分が多く含まれていますので塩分摂取量に注意が必要です。食塩摂取量に関して「高血圧治療ガイドライン(2009)」では6g/日未満、「WHOのガイドライン(2012)」では成人に対して5g/日未満を強く推奨しています。味噌一人分は大さじ一杯(18g)弱ですので、その中に含まれる塩分量は商品によって異なりますが約1.9gです(少ないものは約1.6g)。従って味噌汁に使う味噌の量を減らしたり、減塩味噌を使うなどの工夫が必要になると思われます。
- 発酵漬物
漬物は塩分が多い食品です。日本食品標準成分表2015(七訂)によると一切れ10gとした場合、例えば「大根のぬかみそ漬」では0.38g、「たくあん漬(塩押しだいこん漬)」では0.43gの塩分が含まれています。塩分を過剰に摂取した状態が続くと、高血圧やむくみがみられることがありますので注意が必要です。和食料理では漬物が添えられているほか、味噌汁が付いていたり、醤油を使用する頻度も多く塩分過多になりやすい料理です。このため摂取する漬物の量を減らすほか、漬物にかける醤油の量を減らす、減塩醤油に変更するなど工夫してみてはいかがでしょうか。
- 食酢
食酢は酢酸を含む酸性の液体です。従って過度な摂取になると喉や食道、胃の粘膜を損傷してしまう危険性があると考えられます。しかし、身体への安全性について述べられた論文で、食酢飲料の過剰摂取(酢酸2,250mg)を4週間摂取し続けた場合でも血圧、脈拍、体重、血液検査や尿検査、自覚症状において有害事象は認められなかったとしています(14。これらのことから、料理で用いる酢や食酢飲料を習慣的に摂取することは安全ではないかと考えられます。
- 醤油
醤油も塩分量が多いので注意が必要です。醤油も種類によって塩分含有量が異なりますが例えば「こいくちしょうゆ」は日本食品標準成分表2015年版(七訂)によると大さじ一杯(18g)に含まれる食塩相当量は2.61gです。「高血圧治療ガイドライン(2009)」では食塩摂取量6g/日未満とされていますので大さじ2杯程度で一日の摂取量に相当してしまいます。
工夫することとして、調理過程で最初に使用する調味料の中で砂糖が多いと思います。これにより後に入れる醤油の量が多くなる傾向があるようですので砂糖の量を少なくするようにしてみてはいかがでしょうか。そのほか、減塩醤油を試してみるのも良いと思われます。
また、これまでに心臓病や腎臓病など病気にかかっておられる方は食事制限がある場合があるので医師に確認していただくと安心かと思います。
終わりに
発酵食品の効果についてまとめてみました。身体に良い効果がたくさんあったと思います。食べ物全般に言えることだと思いますが、食べ過ぎは身体に悪い影響もありますので自分の身体にあった量を摂取しながら健康的な食事習慣を送ってみませんか?(‘ω’)
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参考文献)
1)農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部 外食・食文化課 食文化室(2023)「にっぽんの発酵食品」農林水産省.https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/files/user/pdf/japanese_hakko_part2.pdf(閲覧日:2025年3月10日)
2)農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部 外食・食文化課 食文化室(2023)「にっぽんの発酵食品」農林水産省.https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/files/user/pdf/japanese_hakko_part1.pdf(閲覧日:2025年3月10日)
3)立垣 愛郎:乳酸菌の健康機能.Comprehensive Medicine,Vol.17 No.1:8-19,2018
5)赤田 圭司:納豆の機能性ー納豆と皮膚の関係ー.醸協,第101巻 10号:749-754,2006
7)北川 学:変化し続ける味噌 これまでの変遷とこれからの展望.醸協,第116巻 第4号:211-219,2021
9)佐々木 泰弘,河野 元信:ギャバ(GABA)の効能と有効摂取量に関する文献的考察.美味技術研究会誌, No.15:32-37,2010
11)小泉 幸道:食酢の多彩な効用.日本調理科学会誌,Vol.54,No.3:153-156,2021
12)内田 理一郎:しょうゆとその機能性について.日本食生活学会誌,第33巻,第2号:69-75,2022
14)伏見 宗士,岸 幹也,大島 芳文,塚本 義則,伊藤 彰浩:食酢飲料の安全性の検討.生活衛生,Vol.49,No.5:267-278,2005
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